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 女王様の図書室


2005年3月に読んだ本     

2月ははじめの2冊「白夜行」「幻夜」それと「黒と茶の幻想」が大物と言う感じでした。
3月、だんだん暖かくなるとコタツで一日読書三昧の日も少なくなるかも?
でもカフェで読書もいいのよね〜♪


 忘れ雪  新堂冬樹              5.9カラット
 表紙の絵につられて、図書館で借りてしまいました。だってラブの子犬がかわいい目で私を見上げているんだもの。帯のキャッチコピーは「感動と奇跡の純愛小説」「超一流メロドラマ復活宣言」。泣けるのもいいかなと思って読んだ。が、ううむ、二流のメロドラマって感じ。怪我をしたラブラドルの子犬を拾った少女が獣医を目指す少年と出会い、別れ、大人になって再会するというストーリー。再会したのに姿を消す女の子を探す青年。最後に明るみに出る驚くべき真相。と言う感じなのだけど、何となく「純愛」の部分に厚みがないというか、どうしても二流な感じが漂っている。この作者は恋愛小説を書く人ではなかったらしいので、まだ慣れていないとかそういう感じ?江国香織とか山本文緒とかを知っていると何だか子供の恋愛見てるような・・・。でも!この作品でものすごく評価できるのは動物に対する姿勢。主人公の桜木は獣医なんだけど、動物に向き合う気持ちやその動物の姿の表現は凄くいい。それから、手術シーンも出てくるが、ボールを飲み込んだワンコの胃からボールを取り出すシーンの描写。凄く細かくて勉強になる。胃は吊り上げて、内容物が腹腔にもれないように手術するそうだ。ううむ、しらなかった。この間お友達のマリンちゃんがボール飲んで手術してたけどこうやったのか。凄い。はじめの方にでてくるロイドというシェルティの直脱腸の手当てや、フィラリアの治療も凄く詳細に書き込まれている。ワンコ飼いの方は勉強になるので読んでみてもいいと思います。
なんでこの人がここまで治療シーンを細かく表現したかは不明だけど、恋愛小説は辞めて獣医小説を書いたほうがいいのではないかな?

 ねじの回転 恩田陸 7.3カラット
 歴史SFと聞いてあまり気が進まなかったのだが、これが面白かった。歴史といっても1936年、第二次大戦直前の日本である。近未来ではタイムトラベルが出来るようになっていて、過去に遡って様々な修正を行った結果、近未来では原因不明の病気も流行り地球の将来は絶望的である。そこで、国連では歴史のいくつかのポイントを、歴史通りもう一度やり直す事によて現在(近未来)を正常に戻そうという計画を立てる。そのターゲットになったのが1936年2月26日の2.26事件である。1936年の3人の人物が歴史を正しくやり直す手助けをする。うまくいくまで何度でも何度でも繰り返し。荒唐無稽だが、面白い発想だ。何度もリピートしてやり直すというのは悪夢のようである。
 物語を、リピートする3人のそれぞれの側からとリピートさせる未来人の側からと両方の視点で進め、最後にはちゃんと「思いがけないエンディング」とちょっと楽しい「エピローグ」も用意されている。2.26事件をもう一度勉強しなくても多分大丈夫。それほど歴史の知識は無くてもおおまかに分かっていれば楽しめる。よく出来たエンターテイメントだ。
 ところで「ねじの回転」というタイトルはなぜだろう?同名の古典ホラーがあるけど関係あるのかな??

眠れぬ夜を抱いて 野沢尚 7.5カラット
不動産業者の夫が開発した、郊外のこじんまりした住宅街に引っ越してきた平凡な主婦悠子。同じ住宅街に住む同世代の2組の家族と仲良くなる。
が、ある日突然その家族が丸ごと消えてしまう。失踪した家族を探そうと、調べ始める悠子は、夫の意外な過去を知る事になる。オープニングがアメリカの銀行強盗のシーンだったので、いったい銀行強盗の話はどこでどうつながってくるんだろうと首をかしげたのだが、なるほどそう来たか!という感じ。
流石、野沢尚。「意外性」「ストーリー」も勿論満足行くものだが、人物の心の動きもとても丁寧にかかれている。主人公、悠子のとっても「普通」だけど夫を思う強い気持ち、そこから生まれる勇気には共感を覚える。エンディングはちょっと悲しいけれど、かすかに希望をもてるのも後味が良い。
 それにしても、前にも書いたけど本当に惜しい人を亡くした。まだまだ書ける人だったよなー。一体何が彼にそうさせたのかわかんないけど、作品を凄く凄く心待ちにしていた人たちが沢山いた事をその瞬間は思い出せなかったのかな。締め切り間に合わなくていいから、もっと書いて欲しかった。これから日本のドラマ界をしょって立つべき人だったのに。「眠れる森」も「氷の世界」も「リミット」も面白かったのに!返す返すも残念!

号泣する準備はできていた 江国香織 5.5カラット
直木賞受賞作。短めの短編集だ。薄めの本に全部で12編。濃密なのに湿っぽくない愛の物語がさらりと描かれている。
 直木賞と言うのは必ずしもその作家の最もすぐれた作品に与えられるわけではない様で、世の中のトレンドとかその年の他の競合作などによって「あー、去年も候補あがって取れなかったけど、今年のより去年の方がいいな。でもこの人にあげてないのはやばいから、今年あげておこう」ってな感じのこともあるらしい。と、こんな事を言い出したのは、私としてはこれは江国香織のベスト作品ではないなーと思うから。彼女は短編も素敵だけどやはり長編のほうがいい。「冷静と情熱の間」も「流しの下の骨」もよかった。
ちょっと前の短編や他の人と違うなと思うのは、人物の心があまり動かないところ。短編と言うのは生活の一部分を切り取って見せるようなモノだけど、みんな色々な問題を抱えていて、結局問題は何も解決しないのだけど、小さな事をきっかけにほんの少し前進したり、何かをあきらめたりしてゆくのがパターンだと思っていた。だけど、今回のは切り取りっぱなしで、断ちシロの始末をしていないと言うか、まつり縫いをしていないと言うかそんな印象を受けた。最後の1行をあえて書かなかったみたいな。すそのまつり縫いは読者がしろという事かな?

象と耳鳴り 恩田陸 7.0カラット
元判事の老人、関ね多佳雄を主人公に描かれる12編の連作短編ミステリー。謎解きをするのは、本人の場合もあり、妻桃代の場合もあり、娘や息子を主人公にして多佳雄本人が出てこないものもある。
どの作品も、目の前で殺人は起こらないし、犯人を追い詰めたりもしない。ヘビーな長編ミステリーを数多く読んでいると、こういったソフトな短編が何か甘ったるく、物足りなく感じられる事があるのだが、一遍一遍とても良く出来ていて甘さは微塵も感じられない。それどころか、ミステリーとしても完成度が高い上に、人間のゆがみや心のほころびや襞なども旨く描かれている。主人公が年老いた男性であるせいか、全体が枯れた趣きある感じに仕上がっていて味わいがある。

食べてはいけない・ペットフード大解剖 堺英一郎 6.0カラット
「日本大学農獣医学部医学科卒業。獣医師免許を取得し、ロンドン、パリに移住。帰国後、語学学校経営を経て、現在、作家。遺伝子組み換え食品研究家。」という作者が、56のドッグフードについてその原材料、添加物などから安全性を評価、解説している。評価の方針はBHA、BHT、エトキシキンが使用されているものは勿論×。しかし安全といわれている酸化防止剤ビタミンEは開封すると効果がどんどんなくなるので開封したらとにかく早く食べきる事、というのは「なるほど!」でした。そして、動物性油脂を使っているものは開封後は劣化が早いので注意する事というのも「ふむふむ」でした。確かに大袋で買うのは良くないと言われてますよね。
各々のフードについては、納得!の評価のものもあったけど「?」のもいくつかありました。なので100%この本に賛同するわけでもありませんが。
一番印象的だったのは下記の文章「家畜の餌は資料安全法により厳しく管理されていますが、ペットフードは品質、安全性、栄養成分などを規制する法律が一切ありません。例え危険な抗生物質や成長ホルモン剤などの残留する肉副産物や農薬汚染された野菜が紛れ込んでいたとしても問題になることはないのです。」「ヨーロッパのドッグフードは飼料法で管理されています。米国はAAFCO(アメリカ資料検査協会)という公的機関がペットフードの栄養基準を定めています。日本はペットフード公正取引協議会という業界の単体が独自のルールを設けています。このペットフード公正取引協議会は各メーカーの会員からの資金援助で運営されているそうです」つまり、内部組織なのであまり厳しい取締りが期待できないということです。これについては元食品メーカーに勤務していたので心当たりがあります。「食品衛生法」違反のミスをしている表示の商品は「即回収」ですが「内部協会」のルールに反していても「次の生産から」ですまされます。しかも組織に加入していない小さいメーカーはルールも関係ナシです。日本はまだまだ甘いってことですね。
長文になりましたが、愛犬に食べさせているフードについてもう一度考える良いきっかけになる本かもしれません。

劫尽童女   恩田陸  6.6カラット
主人公ハルカは学者、伊勢崎博士の娘。博士はアメリカで研究していたが、研究結果をアメリカ軍に役立てる事に抵抗して逃亡の人生を選ぶ。そして、ハルカは博士の研究のいわば実験にされた「超能力少女」。彼女の能力を利用しようと追いかける「ZOO」という秘密機関、同じく超能力を持つシェパードのアレキサンダーと共に逃げ、戦うハルカ。
この設定自体は、何だか安っぽいSFアクション映画みたいだ。しかし、それだけで終わらせないのが恩田陸の筆の力だろう。ハルカの孤独、悲しみ、そして敵であるはずの「ハンドラー」と呼ばれる男にもアレキサンダーへの思いや悲しみがあることも描かれ、読者の心を動かす。何より、アレキサンダーの賢く従順な姿にはジーンとくる。しかし、シェパードのアレキサンダーがコリーに変装する場面があったけど、そりゃ無理だろ。

村上レシピ 台所で読む村上春樹の会・編 6.0カラット
村上春樹の小説に出てきた食べ物をちゃんとレシピにした変わった料理本。そういえば村上春樹の小説にはよく料理をするシーンが出てくるしかもたいがいは主人公の男性がしている
パスタをゆでていたら謎の女から電話がかかってきたりするのだ。村上春樹好きの人にとっては「ああ、あのシーンの料理ね」という感じで、何かうれしい。しかもそれが写真になっているので、いっそう楽しい。とはいえ、読みものとして楽しんでしまって、料理は作ってみなかったけれど。さて、そろそろ「海辺のかふか」を読んでみるか。

グロテスク  桐野夏生 7.2カラット
「OUT」の桐野夏生の作品。私はあまりこの人の作品を沢山読んでいない。これで3作目。
スイス人の父と日本人の母との間に生まれた美しい妹と全く美しくない姉。姉の友人の和恵、ミツルの人生を描く。私は美しくない姉が主人公だと思っていたのだが、実はこの作品はかつて実際に起こった「東電OL殺人事件」をモチーフにしていると王様に聞いて、描きたかったのは「美しくない姉」の目を通しての和恵の人生だったのかと思い直した。
落ちるところまで落ちてまでも、身を汚してまでも、自分の存在価値を感じたかった和恵。私には彼女の気持ちが理解できるとはいい値。自分が自分であることの意味を彼女はそうする事でしか確認できなかったのだろう。
タイトル通りグロテスクな読後感で、後味は決してよくないが、読み応えのある一冊。そういえば「OUT]も「柔らかな頬」も読み応えは歩けど後味はあまりよくなかったっけ。
和恵が2000円で体を売るシーンには驚愕する。もっともウチにはパンのみみひとかけで体を売る犬がいるが・・・。

                                


4月
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