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 女王様の図書室


2005年8月に読んだ本     

8月は沖縄で結構読みました。大物は「海辺のカフカ」
旅先に本を持っていって読むのは結構好きです。
旅の思い出にもなるし、本のイメージもその場所になります。
「海辺のカフカ」を思う度、私は座間味の海を思い出します。

               大道珠貴 5.5カラット
 2003年に「しょっぱいドライブ」で芥川賞を受賞した大道珠貴の2000年の処女作。これで九州芸術祭文学賞受を受賞したそうだ。
私は「しょっぱいドライブ」の方が好きだった。」
この人の作品は人間の汚い部分、醜い部分も、かわいい部分も一緒くたに鍋で煮込んで作った鍋料理みたいな、変な味わいがある。嫌な部分も、「しょうがないさねー、そんなもんさねー」と言う感じに描き、その代わり、愛しくかわいく美しい部分も、同じトーンで美化しすぎずに描く。「ありのまま」なようで実は「ありのまま」ではない。
「裸」の方がイキイキして荒々しくて新鮮だった、という意見も目にしたが、私にはちょっとそれがべたついた印象で気になった。「しょっぱいドライブ」のほうがややこなれた感じで私好み。
ちなみに「裸」の主人公は19歳のホステスらしくない性格の田舎のホステスです。
ところで芥川賞作家って作品のトーンがちょっと似てる。同じ賞だから仕方ないのかな。

 ぶたぶたの食卓      矢崎 存美 7.0カラット
 ピンクのブタのぬいぐるみ「ぶたぶた」。彼は、おじさんで、奥さんもいて子供もいる。普通に生きて動いている。そんな「山崎ぶたぶた」がかかわる、やさしく暖かい物語がこの「ぶたぶた」シリーズ。多分これでシリーズ6冊目だと思う。全部読んでいるけどどれもイイ。そもそもこの人はこんなメルヘンなシチュエーションを描いているものの、ミステリー作家なので内容はちゃんとミステリーな話も多いです。ミステリーでなくてもちゃんとオチが付いているものばかり。なのでメルヘンなだけじゃない感じ。
ぬいぐるみが動いたりしゃべったりするくせに、内容は結構シビアで厳しい現実を突きつけられたりもしますが、救いがあり、心が温かくなるやさしい物語ばかり。ぬいぐるみのぶたが動くというシチュエーションがどうしても許せないという方にはお勧めしませんが、そうでなければお勧め。私はこれを読んだ後思わずピンクのぶたのぬいぐるみを買いました。「どれがぶたぶたに似てるかなー?」と言いながら。

 海辺のカフカ        村上春樹 7.5カラット
 ちょっと読むのが遅くなりましたが、座間味に持っていった1冊。いや、上下なので2冊か。
 15歳の誕生日に家を出た田村カフカと猫と話ができるナカタさん、二人の不思議な旅と二人をとりまく人々を描く。 
今までの村上作品と少し雰囲気が違う感じを受けた。カフカの人物像は村上春樹らしいとも言える。あまり現実味がなく透明感がある少年は、彼が描いてきた主人公たちの少年時代のイメージだ。ただ、ナカタさんの少年時代に遡った時の戦争中の記述、ナカタさんと一緒に旅をするトラック運転手のホシノ青年。それらにちょっとリアリティがあり、現実臭く、今までと違う感を受けたのかもしれない。ホシノ青年は嫌いじゃないなぁ。
 何処かの書評で「オチのない詐欺小説」と表している人がいたが、村上春樹の作品にオチを求めてどうする。読み終わった後にすっきりも納得もしないのが村上春樹だ。

 夕凪の街・桜の国     こうの史代 7.2カラット
 原爆投下10年後の広島の少女の切ない話と、現代の東京のストーリーを交錯させた漫画。原爆が広島の少女から奪ったもの、そして、その弟やその子供に与えた影響。残酷で悲しい現実を、たんたんとした語り口と美しい絵で描く。
私たちの世代は原爆漫画というと「はだしのゲン」だった。素晴らしい名作だが、小学校低学年の私にはショックが大きすぎる漫画だった。それに対して、この作品は子供向けとは言いがたいが、穏やかに、切なく、美しく、でも悲しい過去を正面からリアルに描いていると思う。こんなキレイ事では・・・という面もあるとは思うが充分伝わっている。
 ちなみに作者は広島出身。なるほど、とは思ったが勿論彼女も戦争を知らない世代。そういう人が現代の目線でこのような作品を描くという事はとても価値のあることだと思う。そういう意味では本当は9カラットぐらいつけたい気持ち。

 ひたひたと           野沢尚 6.0カラット
 野沢尚の遺作となった短編集。
とある部屋に集まった5人の男女が人には言えない秘密を告白しあう、という話。作品には2人目の告白までしか書かれていない。野沢尚は書きかけで亡くなってしまったから。この短編集は未完成なのだ。ホラーの要素もある、人間の暗い部分を抉り出すようなストーリー、これをあと3つ書くエネルギーが彼にはもう残っていなかったのだろうか。
 きっと、5人分全部揃えば、もしくはさらにオチをつける6編目の物語もあったのかもしれないが、いづれにせよ完成すればかなりのボリューム、かなりの迫力ある短編集になった事と思う。かえすがえすも残念だ。
 最後の瞬間に読者の事なんか考える余裕はなかったろうけど、書き上げてからにして欲しかった。(不謹慎か?ゴメン)

 僕たちの戦争         荻原浩 7.2カラット
 2001年9月12日。フリーターの尾島健太(19歳)、サーフィン中に波に呑まれ1944年にタイムスリップする。一方、1944年太平洋戦争中、石庭吾一(19歳)は飛行訓練中2001年にタイムスリップ。二人の19歳の青年が入れ替わるわけだ。
 設定自体はありがちだが、2001年に突然やってきた、ガチガチの軍国青年吾一の驚きや気持ちの変化、太平洋戦争真っ只中に投げ込まれた、いかにも今時のしょーもない若者だった健太の戦いと気持ちの変化が上手く描かれている。時を越えた健太と吾一の不思議なつながりもなかなか面白い。
 最後に健太が行かされる場所が「人間魚雷回天」の訓練所だったことは印象的だった。「カミカゼ特攻隊」じゃなくて「回天」にしたところが、なかなか渋い。(ネタバレでごめんなさい)
だけど、どちらにしたって、彼らはお国のために美しく散っていったりなんかしていなくて、苦しくて、残酷で、愛するものを思いながら、本当は死にたくなんか絶対なかったんだという事は、この作品を読めば少しわかるかもしれない。

 追憶のかけら        貫井徳郎 7.3カラット
 妻を交通事故で無くした大学講師の主人公。彼のところに自殺した作家の未発表原稿が持ち込まれる。持ち込んだ人の頼みは「作家の自殺の原因を突き止めること」。そこから、主人公の謎解きが始まる。
 現代の主人公をはめようと仕掛けられた罠、悪意の正体を探る謎解きと、作家の手記の中で次々起こる事件と、二重構造になっている。
 片や現代の少しやる気の無い大学講師、方や戦後のごたごたの中のストイックな感じの作家。2つの物語を人物像、時代背景とも上手く書き分け、かつ上手くまとめて上等のミステリーに仕上げていると思う。
 ラストシーンも切なく悲しいけど心にしみる。
 ただ、迫力という意味では貫井徳朗は「殺人症候群」の方が私は上だと思う。「追憶のかけら」は上手い!面白い!ってかんじ。

 サウスバウンド       奥田英朗 7.7カラット
 王様が読んでいるのは良く見かけたが、読むのは初めての奥田英朗。
これは傑作でした。とにかく読み始めたら止まらない!
 主人公の二郎は小学6年生。自分勝手で暴力的な元過激派の父、働かない父の代りに喫茶店を経営して一家を支える母、現代っ子の現実的な妹、クールな姉という家族構成。
 担任の先生を困らせる父に頭を悩ませ、不良の中学生カツのイジメに頭を悩ませる。こんな父親いるはずない、しかも全く共感できない、嫌いだ、と思いながら読み進むと、過激派をかくまうあたりから、だんだんこの父親が頼もしく見えてくる。そして、警察との大乱闘。ちょっとカッコいいかも?
 それがきっかけで、家族は西表島に引っ越す事になるのだが、ここからさらにこの父ちゃんがカッコいい。そして、二郎もイキイキと動き出す。西表島の自然と人々のやさしさも心地よい。
 でも、ここでも父ちゃんは体制と戦い、破れるんだけど。戦う父ちゃんはカッコいい。それをカッコいいと思える家族もカッコいい。


                                

9月

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